デジタルネットワークへの挑戦(KOMORI 100年史から見る技術と挑戦シリーズ第五回)
日時:2026年01月28日(水)

・KOMORIは1980年代からK-LANやAMR、PQCを開発し、印刷機と管理システムのネットワーク統合を先駆的に推進。
・drupa2000で「DoNet」を発表し、JDF対応のオープンアーキテクチャーでプリプレス・ポストプレス連携を実現。
・KHSやKHS-AIによりジョブ切替時間と損紙を削減し、一発見当・一発色合わせを可能にする生産性向上を達成。
・KP-Connectとクラウド連携で印刷機の稼働状況を「見える化」し、他社機器との接続性を強化。
・コネクテッド・オートメーションとKP-Connect APIでスマートファクトリーを構築し、印刷工程全体の自動化と効率化を推進。
「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」シリーズ(第五回)
本シリーズ「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」では、当社の100年にわたる歩みの中から、特に印象的な技術革新や事業展開をピックアップしてご紹介する。
第五回は、労働力不足と需要減少という業界課題に応えるべく進められた「デジタルネットワークへの挑戦」を紐解く。
日本の生産年齢人口(15 〜64 歳)は1995 年をピークに減少が進み、印刷業界も労働力不足や国内需要の減少は深刻化しつつあった。折しも印刷関連データ連携の国際統⼀規格が定められた。デジタルネットワークは時代の要請であり、そのための技術⾰新は急務であった。
来るべき時代への布石
当社がデジタルシステム開発に取り組み始めたのはかなり早く、ようやくネットワークによるデータのやり取りが普及し始めた1980 年代だった。
当社はまず電話回線を用いた「K-LAN」というローカルエリアネットワークにより、AMR(自動印刷準備システム)、PQC(印刷品質管理システム)と、印刷機械を統合的に管理するシステムを構築した。当時は、データ容量に対する送受信速度の問題や、印刷機自体に搭載されている制御系あるいはシーケンサーによる制御の仕組みの構築などの開発課題があり、それらを総合的に進める必要があった。今や、モーターやエアー制御などを活用し、多くの部分が電装系の制御システムで行われている。
DoNetの誕生
当社は印刷会社の発展への鍵はスマートファクトリー化にあると見越しており、drupa2000で将来のデジタル化に完全対応可能なプラットフォーム「DoNet(Digital Open Architecture Network)」を発表した。「DoNet」は、デジタル対応の高性能印刷機を中心に据えた、印刷機専業メーカーならではの「印刷の標準化」を支援する視点から煮詰めたデジタル・ワークフロー・コンセプトである。
DoNetはデータの連携と管理を主軸としたデータマネジメントと印刷品質の標準化を目指すカラーマネジメントの2 本柱がワークフローの中心となり、他社製品を含むプリプレスとポストプレスがその2 本柱につながるグランドデザインとなっている。
プリプレスやポストプレスとの連携に関しては、最先端のJDF 接続性を誇り、さまざまな専業メーカーやベンダーとの接続テストを繰り返し、お客様の環境第一優先のオープンアーキテクチャー思想を貫いた当社ならではの強みをアピールした。
当初、DoNet の中核は、データの橋渡し役を担う「K- ステーション」と印刷機の効率化を実現する「KHS(コモリハイパーシステム)」、校正刷りと最終印刷物との色再現を合わせて印刷品質の標準化を目指す「PDC シリーズ( 色調測定管理装置)」「K-ColorMatchPro/K-ColorProfiler(コモリカラーマネジメントシステム)」であった。
KHS は、K- ステーションからのジョブデータとプリセットデータをネットワーク経由で受け取り、仕事の切替時間や損紙を限りなくゼロに近づけることを目標に開発された画期的な生産性向上システムである。算出されたプリセットデータによって限りなく「一発見当・一発色合わせ」を可能にした。
後にそのKHS をベースにさらに進化させた「KHS-AI(自己学習機能搭載コモリハイパーシステム)」を発表した。
これらを軸にデジタルワークフローを構築することで、仕事の仕掛り期間を短縮する、生産性を高める、品質を高める、顧客ニーズに対応する高いリターンを見込める投資とするなど、より現実的にスマートファクトリー化を推進した。

中核となるK-ステーションの進化
当社はIGAS'99 において、DoNet の中核となるK- ステーションを提案した。複数の当社印刷機を管理する集中管理システムであると同時に、外部とのMIS(工程管理システム等)とのインターフェースであり、CIP4/JDF による印刷生産関連のデータマネジメントを行うソフトウエアである。
このK- ステーションコンセプトと基本設計を受け継ぎつつ、インターネット全盛時代の印刷会社のIoT を目指して進化させたのが、IGAS2015 で発表した「KP-Connect」だ。
KP-Connectとは、当社(K= 小森)と印刷会社(P=Printing Company)をつなげる(Connect)ことを意味する。デジタルでの印刷データのやり取りやネットワーク化が進む中、クラウド環境を活用し、印刷機の稼働状況をいつでもどこでも確認できるようにしたものである。
さらに時代が進み、ネットワーク速度の向上やクラウド活用に呼応する「KP- Connect Pro」においては、より多くのメーカーやベンダー、既存の機器との接続が可能となった。
コネクテッド・オートメーションによるスマートファクトリーの実現
当社は2016 年、最新のICT 技術を用いて機械と作業工程、人のすべてがつながる「KOMORI ICT ソリューションズ」コンセプトを展開し、2018 年、さらに一歩先を行く「コネクテッド・オートメーション」を提唱した。これは、お客様のオフセット印刷機、デジタル印刷機、プリプレス、ポストプレスをKP-Connect Proを軸にして連携させることで、稼働状況を「見える化」し、「自動化」「整流化」することでお客様の労働生産性の極大化を図るものだ。
そして2022 年、当社は印刷業界としての「スマートファクトリー」を提案した。省人化・省力化技術を搭載した生産性の高い機械に加え、工程間の用紙搬送にAGV(無人搬送車)やロボティクスを取り込むことにより、すべての印刷工程をシームレスにつなげたのだ。この一気通貫生産により、劇的に生産効率の改善を図ることができる。
さらに2023 年3 月、より幅広い加工工程や物流などの他業種、JDF 連携が難しい分野も含めて連携を可能にする目的で「KP-Connect API(Application Programming Interface)」の開発、提供を発表した。クラウド経由のAPI とすることで、KP- Connectの持つデータをアライアンス企業やサプライヤーとも共有でき、お客様への新たな提案や課題解決が可能となる。
当社はこの「コネクテッド・オートメーション」の概念によって、お客様の生産現場の仕事を一段上にシフトすることで、「どうやって創るか」という課題解決型から、「何を創るか」への意識変革を目指している。高い生産性と新しい付加価値を生み出すこと、それこそが印刷業界全体の進化につながると考えるからだ。






