つくばプラントの設立(KOMORI 100年史から見る技術と挑戦シリーズ第六回)

日時:2026年04月07日(火)

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・取手・関宿工場の機能を段階的に移転し、2009年に枚葉・オフ輪・紙幣印刷機を同一ラインで生産できる世界唯一の工場を完成させた。
・生産体制強化のため「品質・信頼性」「スピード・効率」「コミュニケーション」「環境対応」「人材育成」の5つを重点課題に設定。
・ジャストインタイム方式や自工程保証、印刷フルテストを導入し、品質向上・コスト削減・リードタイム短縮を実現、「TSUKUBA品質」を確立。
・環境対応として太陽光発電、省エネ設備、ゼロエミッションを推進し、KGCやグローバルパーツセンターを併設して技術開発・教育・サービスを強化。

「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」シリーズ(第六回)

本シリーズ「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」では、当社の100年にわたる歩みの中から、特に印象的な技術革新や事業展開をピックアップしてご紹介する。
第六回は、世界最高水準の印刷機械生産体制を築いた「つくばプラント」の誕生と、その進化の軌跡を振り返る。

世界一の印刷機械工場を目指して

敷地面積約18万5,000㎡、延べ床面積約6万3,800㎡。
工場はもちろん、研究施設、デモンストレーションセンター、トレーニングセンターなどを有する一大生産拠点「つくばプラント」が2009 年に誕生した。
ものづくりの原点である品質と信頼性を究極まで高めることは言うまでもない。
当社が目指したのは、その先にある「感動」を届けるための世界一の印刷機械生産体制だった。

主力工場の移転と結集

生産体制の強化は、当社がどうしても成し遂げなければならない課題だった。1990年、小森印刷機械製作所から小森コーポレーションへと商号変更したことを機に、当社の動きに拍車がかかった。

主力工場の一つである取手工場は操業開始から30年以上が経過したこともあり、老朽化が目立ち始めていた。労働環境の悪化は生産効率にも大きく影響を与える。そこで、増床・建て替えから移転までを視野に入れ、改善策を模索した。敷地面積を考えると、増床や建て替えが難しいことから、当社の意向は自ずと移転へと傾いた。

移転先の候補地となったのは、茨城県の県南に位置するつくば市だった。主力工場のある取手と関宿の中間地にあり、1985年に開催された国際科学技術博覧会(通称つくば万博)以降、大手企業や優良企業が集まり始め、成田空港から高速道路でのアクセスも良いことから、産業界でも注目されていた場所であった。

立地条件は申し分ない。しかも、既存工場の建て直しとは違い、稼働を止めずに新工場を設立することができる。つくばに新工場を設立することに異論はなかった。

新工場の建設工事と稼働については、優れた立地や効率的な生産体制を少しでも早く活用するため、段階的に行うこととした。

2002年、第1期工事が完了した。取手工場で組み上げた機械を持ち込み、出荷前のテストを行うことから、「つくばプラント」の稼働がスタートした。それから3年後の2005年、第2期工事が完了すると、取手工場の基幹機能を移転した。四六全判、44インチまで対応できる枚葉印刷機械工場が完成した瞬間だった。

2006年、日本はもちろん、世界各国のVIP取引先や世界17カ国のジャーナリストなどを招き、大々的なお披露目会を開催した。18万5,000㎡の広大な敷地に延べ床面積約3万8,500㎡にも及ぶ「つくばプラント」は、印刷機械を熟知した人たちからも驚きと称賛の声が上がった。この第2期工事完了時、設計開発部門もつくばプラントに移したことで、つくばプラントは、工場、研究施設、デモンストレーションセンター、トレーニングセンター、厚生施設等を擁する、当社の一大拠点となった。

当社がつくばプラントに導入したのは、必要なものを必要なときに必要な量だけ生産するジャストインタイムの新生産方式である。在庫や経費を削減して効率化を図ることで、生産リードタイムの大幅な短縮を実現した。また、需要が高まっていた国内外の受注に対応できる増産体制が整ったことで、地域ごとに立案した販売戦略を積極的に推し進めていくことが可能になった。

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新生つくばプラント誕生

2009 年10 1 日、第3 期の工事が完了した。関宿工場の機能もすべて移植し、新生つくばプラントが誕生した。延べ床面積は第2 期工事完了時の約3 8,500㎡から約6 3,800㎡へとさらに拡大し、同じ生産ライン上で枚葉オフセット機、オフ輪機、紙幣印刷機が生産できる世界で唯一の工場の完成である。

世界一の印刷機械生産体制を構築するために、当社が設定したキーワードは「品質・信頼性の向
上」、「スピードアップと効率化」、「コミュニケーション強化」、「環境対応」、「人材の教育・育成」の5
つだった。

中でも一番に掲げたのが、「品質・信頼性の向上」である。最先端の生産環境を整備するとともに、研究開発を加速するための施設や設備を拡充し、さらに全工程での自工程保証、出荷時の印刷フルテスト体制の確立を目指した。

次は「スピードアップと効率化」だ。全工程において徹底的な動作分析を行うことで、無駄やムラを排し、製造リードタイムの短縮を目指した。そのため、社内外の緊密な情報ネットワーク構築や、ジャストインタイム方式による部品管理、開発・設計から生産・納入までのスピードアップと効率化を進めていくこととした。

3 つ目に掲げたのは、「コミュニケーション強化」である。お客様、サプライヤー、従業員に" 開かれたプラント" であることを志向し、工場のショールーム化、情報ネットワークの緊密化、オープンオフィス化を推進し、これらを原動力とするコミュニケーションの進化と深化を目指した。

そして4 つ目が、時代の一歩先を行く「環境対応」。太陽光や風力など自然エネルギーを活用した発電システムに加え、使用電力量およびCO2 排出量の削減を追求し、20 区画以上の分別エリアを設置することでゼロエミッションのさらなる充実を図ることとした。

最後の5 つ目は、「人材の教育・育成」である。生産技術向上のためのトレーニング施設、基本技術や先端技術の研究開発、機械の耐久性検証が行える実験室、デザインレビュールームなど、充実した環境を十二分に活用し、人材の教育と育成を推し進めることとした。

全貌を現した新生つくばプラントは、統合によって工場経費や製品原価の削減に成功したことや、世界各国の在庫管理を取りまとめたことによる製品原価の削減など、コスト面でのメリットを最大限に実現した。その上で、開発の効率化とスピードアップを究極まで可能にするとともに、品質改善のノウハウを蓄積するなどして、世界最高水準の印刷機械生産体制を構築したのである。

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TSUKUBA品質の実現へ

世界一の印刷機械生産体制を構築したつくばプラントは、当社が新たなステージへと上るスタンダードをもたらした。それを一つの言葉で表したのが、「TSUKUBA 品質」の実現だ。

当社は、何よりも、製品の信頼性を高めることに注力した。そのために行ったのは、部品点数を減らすことだった。一つの印刷機械にある部品は平均5 万点。その数を減らせば、生産時のミスやトラブルを減らすことができ、コストも下げることができる。さらに、納入、稼働後のメンテナンスも、部品が少ない分、二重三重のきめ細かいチェックが可能になるため、事前予防も容易になる。この考えをベースに、適正な部品点数はどのくらいか、徹底的に精査することからスタートした。

当社はさらに、「自工程保証」の徹底を図った。自工程保証とは、次の工程に回す前に、今行っている工程を入念にチェックし、自ら保証することだ。工程ごとにこの保証を繰り返せば、保証の精度は上がり、万が一の場合もどの工程に問題があるのか明確となる。それにより不具合の流出を完全に防止できると当社は考えた。

その上で、出荷前に印刷のフルテストを行うこととした。実際の印刷を想定し、多くのチェック項目をクリアした製品だけを出荷することにしたのである。

さらに、製品の信頼性向上とは少し違うベクトルにあるが、当社が大切にしていることがある。それは「知覚品質」、その一つとして、機械内部の見た目へのこだわりだ。機械のカバーを開けたとき、仮に配線が雑然としていても品質に問題はないと判断されるかもしれない。しかし、整然としているほうがメンテナンスや修理にかかる時間は短縮できる。お客様に安心感を与えることもできる。このような知覚品質の考え方は、つくばプラント内の清掃美化活動、整理整頓活動にもつながった。その整然とした環境は、つくばプラントを訪れた人たちに新鮮な驚きを与えている。

先進のエコファクトリーとして

つくばプラントは、敷地内に数千本の植樹を行うなど、緑豊かな景観を誇る。しかも、環境配慮にも力を入れ、自然エネルギーの活用設備、省エネの装置設備を採用している。環境負荷低減に対応した主なシステムは以下の通りだ。工場や事務所の環境負荷を低減するべく、太陽光発電や省エネ型空調用の熱源を導入した。さらに機械加工エリアにおいては稼働電力監視システムを導入。加工機械の運用法を随時見直すことで、電力削減を進めた。加工機械や印刷機械で使用する潤滑油は再生システムの導入により、試運転や調整で使用した油はすべてろ過し、クリーンな潤滑油へと再生してリユースを繰り返している。

生産工程で排出される廃棄物を素材ごとに収集、分別することは言うまでもない。搬送に使用した木製パレットはすべて回収し、プラスチックパレットも再利用を徹底するなど、リサイクル率100% を目指し、ゼロエミッションに取り組んでいる。

中でも特筆すべきは、つくばプラントが2016年に導入した太陽光パネルだ。サッカー場とほぼ同じ面積がある工場屋上に、太陽光発電モジュール2,016 枚を設置。設備容量534.2kWh のシステムで、その発電量は一般家庭142 軒分に相当し、つくばプラントの電力の5% を賄っている。

もう一つは、省エネ型空調用の熱源である。2018 年には、環境省が最高水準の省エネと認定した空冷ヒートポンプチラーへと更新したことで、つくばプラント全体のガス使用量を約35% 削減することに成功した。

これらの施策は現在もアップデートを続けています。
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つくばプラントは環境対応にも力を入れた世界最高水準の印刷機械工場であり続けるために、今も進化を続けている。

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サッカー場と同等面積の太陽光発電モジュール

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壁面にも設置された太陽光発電パネル

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環境省が最高水準の省エネと認定した空冷ヒートポンプチラー