世界の紙幣印刷機をリードする(KOMORI 100年史から見る技術と挑戦シリーズ第八回)

日時:2026年05月14日(木)

「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」シリーズ(第八回)

本シリーズ「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」では、当社の100年にわたる歩みの中から、特に印象的な技術革新や事業展開をピックアップしてご紹介する。
第八回は、国産初の紙幣印刷機開発から世界の紙幣印刷機市場への参入までの軌跡をたどる。

・1958年に大蔵省印刷局へ紙幣印刷機を初納入し、国内唯一の紙幣印刷機メーカーとして継続受注と技術確立を実現した。
・1960~70年代にドライオフセットや凹版印刷などの高度技術を開発し、複合印刷機による高精度・高速化を達成した。
・1980年代に海外市場へ進出し、世界の紙幣印刷分野での展開を本格化させた。
・多様な特殊印刷技術を結集した紙幣印刷機で高い評価を獲得し、証券印刷機世界シェアの約50% を占めるサプライヤーとして、今後も海外市場の販路拡大に取り組む。

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1950 年代末より大蔵省印刷局(現国立印刷局)に紙幣印刷機を納入以来、当社は国内唯一の紙幣印刷機メーカーとして日本銀行券の印刷機製造を請け負ってきた。1980 年代に世界市場へ進出すると、「KOMORI の技術力」は海外から高い評価を得た。今日までの輸出先は世界39 カ国(2024年12月時点)を数え、紙幣印刷機のリーディングカンパニーとなったのであった。

大蔵省印刷局より継続的に紙幣印刷機製造を受注

当社の紙幣印刷機販売は、1958 年に大蔵省印刷局へ銀行券印刷用の凸版枚葉2 色印刷機を納入したことから始まった。受注条件は納期4 カ月、しかも5 社の競争入札であったが、当社の技術力を結集して見事に落札した。この実績は翌年の凸版枚葉4 色機の受注につながり、大蔵省印刷局の信用をさらに高めることとなった。
当時の大蔵省印刷局は、海外から紙幣印刷機を輸入していたが、高度経済成長期を迎えて紙幣を増刷する必要があり、紙幣印刷機の国産化を進めていた。そうした時代背景の中、国内で精密かつ高品質な紙幣印刷機を安定的に供給できる会社として当社が選ばれ、1961 年に国産の紙幣印刷用ドライオフセット印刷機を開発した。
大蔵省印刷局より継続的に受注するようになった当社は、1964年に枚葉7 色ドライオフセット印刷機と3 色凹版印刷機を完成させた。1967年にはドライオフザンメル3 色印刷機と小型ドライオフ凹版6色印刷機を納入し、偽造防止用として銀行券や有価証券印刷に使用された。1972年に開発したドライオフセット凹版印刷機は、ドライオフセット4色と凹版による3色を合わせた7 色の印刷を同一の圧胴で1 回転のうちに実現し、毎時7,800 枚の高速印刷を可能にした。その後も1976年に銀行券用番号印刷2色機と銀行券用自動番号器検査機、1977 年に銀行券用自動検査装置付番号印刷機を納入するなど着実に実績を積み上げ、大蔵省印刷局に納入できる国内唯一の紙幣・証券印刷機メーカーとしての地位を確立した。

初めて大蔵省印刷局に納入した紙幣印刷機は足立工場で製造
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世界の紙幣印刷市場へ進出

当社は1980 年代に入ると、グローバル印刷機メーカーとしての事業戦略を掲げ、紙幣印刷機の海外進出を決断した。大蔵省印刷局の納入実績と紙幣印刷の高い技術力を海外向けに宣伝し、売り込み活動を開始した。
当時の銀行券印刷の世界市場は、イギリスのデラル・ジオリ社とブラッドベリー・ウィルキンソン社の独占状態であった。海外で紙幣印刷機を受注するには、印刷技術だけではなく、紙幣デザインや製版・刷版技術、プラント設計など、総合力が必要だった。そこで当社は1984 年、ブラッドベリ―・ウィルキンソン社と業務提携し、世界市場に進出する予定であったが、契約直前に同社はライバル会社に買収されてしまった。すでに海外のお客様と販売交渉を始めていた当社は、この難局を乗り越えるべく、ブラッドベリー・ウィルキンソン社を退職した優秀な人材をスカウトして、1986 年にイギリスのロンドン郊外に「コモリ・カレンシー・テクノロジー・UK・リミテッド(KCT)」を設立した。業務内容は、海外での当社製造の印刷機械、周辺機器、デザイン、製版、刷版などの委託生産であった。
KCT が印刷工場の設計をはじめ、トータルな販売体制を確立していることを世界にアピールするため、1987 年に海外の大蔵省や中央銀行の政府発券機関、政府印刷局、民間委託会社を東京に招待し、当社が開発した銀行券・証券用特殊印刷機のセミナーと印刷実演会を開催した。このセミナーは大きなビジネスチャンスとなり、各国から問い合わせが相次ぎ、翌年、韓国造幣公社の証券用印刷機受注に結びついた。これが当社の紙幣印刷機の海外輸出第1 号機であった。

世界の大手紙幣印刷会社とパートナーシップを構築

1991 年に当社は旧ソ連の財務省印刷局からルーブル紙幣印刷用の設備を受注した。この設備は新生ロシアの財務省が引き継ぎ、翌年からルーブル紙幣の印刷が始まった。1996 年にはインド中央銀行に紙幣印刷機器の一貫設備を、1999年はナイジェリア造幣公社に紙幣製造一貫プラントを納入した。2000 年にはドイツ造幣公社に紙幣製造機を輸出し、ユーロ紙幣が印刷された。その後、2011 年から2 年連続でフィリピン中央銀行から紙幣印刷設備を受注するなど、紙幣印刷機の輸出は当社の成長分野となった。

当社の紙幣印刷機で刷られた新ポンド紙幣
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当社は2011 年に世界最大手の民間紙幣・証券印刷会社である英国デ・ラ・ルー社と技術協力契約を締結し、紙幣印刷の品質や生産性をはじめ、技術革新の分野で緊密に連携していく。その後の技術協力などが契機となり、イングランド銀行向けの紙幣印刷設備を受注し、ポリマー素材の新ポンド紙幣は、当社の印刷機で製造するようになった。
さらに2016 年、米国の民間紙幣印刷会社クレーンカレンシー社がマルタ共和国に建設する新工場に導入する銀行券印刷設備として、当社の紙幣印刷機が選ばれ契約に至った。同社は高度なセキュリティー機能と優れたデザイン性を有する銀行券を世界の中央銀行へ提供している伝統と実績のある企業で、当社の紙幣印刷の技術力が高い評価を得たことにより受注となった。こうした海外の大手紙幣印刷会社とパートナーシップを構築することで、当社の紙幣印刷機の品質と信頼のブランドが高まり、海外事業の拡大につながっていった。

多様な印刷技術を結集する

紙幣印刷機は偽造防止のため、主にオフセット印刷機、凹版印刷機、番号印刷機、番号コーター機などの銀行券印刷ラインを構築し、特殊な印刷方式を組み合わせて、当社が誇る高度な印刷技術を結集して製造されている。また、紙幣印刷に使用する設備機器は偽造されないように、あえて造りにくい複雑な構造にしている。
紙幣印刷機の納入先は、日本の国立印刷局、各国の中央銀行や政府造幣機関、民間の紙幣印
刷メーカーなどに限定されるので、製造する台数は限られ、大量生産ではなく一台一台を受注生産で行う。1 台の紙幣印刷機を製造するのにかかる期間は約2 年、商談は3 ~5 年と長期に及ぶ。当社は2010 年より東南アジア、中国、英国、フランス、インドなど、各国の中央銀行や民間の紙幣印刷会社に紙幣印刷機を納品してきたが、特に印刷需要が高まっているアジアの新興国を重要市場と位置付け、販売拡大に注力した。海外市場で販売実績を重ねていくと、当社の技術開発力、製品の高い性能と品質が高く評価され、2018 年に当社の銀行券用番号コーター印刷機「カレンシーNV32」が国際通貨協会(IACA)の最優秀技術賞を受賞した。

当社ハウスノートにおける特殊印刷例
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①オオカミの毛並みも緻密に再現された高精細凹版印刷
②計22色使用、見当精度の高い両面多色オフセット印刷
③ポリマーをコットン紙で挟んだ三層構造の特殊原反
④凹版の深さを変えることで階調を与えた変調凹版印刷
⑤UVライト照射で絵柄が現れるUV繊維原反を採用
⑥ミクロン単位の凹版マイクロテキスト

2019 年には米国、ヨーロッパ、アジアなど14カ国の中央銀行や紙幣印刷会社の関係者をつくばプラントに招き、銀行券印刷機の商談会を開催した。印刷稼働時間や紙幣デザインの可能性を追求したデモンストレーションを展開し、当社の銀行印刷機ラインの優れた印刷品質、生産性、操作性をアピールし、新規の商談を多数得ることができた。

KOMORIの最先端技術で世界の紙幣づくりをリード

2017 年9 月にイングランド銀行が発行した新10 ポンドのポリマー紙幣は、当社が英国デ・ラ・ルー社の工場に納入した2 つの新生産ラインで印刷された。ポリマー紙幣は、最先端のセキュリティープリントテクノロジーとポリマー紙幣デザイン技術を融合することで、紙幣の偽造防止機能を高めている。また、新10 ポンド紙幣は、目の不自由な方のために、英国ポンド紙幣では初めて触感識別マークを刷り込むなど、複雑なセキュリティー機能(10 の特長など)を採用した。ポリマー紙幣を印刷する上で生じるさまざまな課題は、当社の優れたシート給排紙システムなど、高い開発力と技術力でクリアし、高品質の紙幣印刷機を納入することができた。
こうした先進国では、紙幣の耐久性や偽造防止機能の向上を図るための改札需要が見込まれる。一方、新興国では活発な経済活動による銀行券の増刷需要があり、アジア地域を中心に堅調に推移している。
当社は初めて大蔵省印刷局に納入して以来、約60 年間で200 台以上を国内で受注した。また、
海外市場での販売実績も好調で、今日では証券印刷機世界シェアの約50% を占めるまでになった。これは長年にわたり紙幣印刷機市場を独占していたドイツの競合会社と並ぶ販売実績であり、今後も世界の紙幣印刷機サプライヤーとして、海外市場の販路拡大に取り組んでいくのである。

証券印刷機導入国と地域
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