青森県青森市に拠点を構える社会福祉法人青森県コロニー協会のセルプステーション青森は、身体障がい者福祉工場として1977年に設立された。障がい者雇用を継続・拡充するために、さまざまな事業を展開しており、約50年にわたり、入力・製版から印刷・製本までの一貫生産で青森県内の官公庁や企業の印刷物を担ってきた。変化するニーズへの対応や、イージーオペレーションを強化すべく、2024年10月にはImpremia IS29sを導入した。その背景や効果について、横内正秋名誉会長、副工場長の三上尚美氏、ポストプレス課印刷係の坂井貴仁氏にお聞きした。
Impremia IS29sの性能とイージーオペレーションが決め手
(福)青森県コロニー協会の横内名誉会長は、「授産施設として、タイプ印刷を取り入れたのが印刷会社としてのスタートです。現在は地元に根差して、入力・製版から印刷・製本までを一貫して対応しています。私たちは障がいを持った方と健常者の方とが一緒に仕事をすることを目的にしており、誰でも簡単に操作でき、使いやすい設備を、後加工機やPODにおいてもいち早く導入してきました」 と設立背景と運営方針を説明する。
今回のデジタル印刷機Impremia IS29s導入に踏み切った理由も、少部数化への対応と使いやすさだった。
三上副工場長は 「特に1000部以下の小ロット案件では菊半8色機を重宝していましたが、表裏見当の調整や版替え作業に手間がかかり、もう少し簡単にできるものはないかと探していました」。さらに、人材不足が深刻化する中、「誰にでも操作が簡単で、高品質な印刷を可能とするデジタル印刷機に、5〜6年前から興味を持っていました」 と話す。KOMORIの工場見学で、Impremia IS29sの色調を実際に確認し、「色域の広さ、特に広色域の発色の美しさはオフセットを凌駕するレベルです。また、1枚目から本番の紙が出てくるので、ヤレ紙削減によるコストカットや環境配慮の点でも非常に優れており、導入を決めました」 と話す。
初案件で証明されたRGBと特色再現
同機の初案件は、青森県立美術館での個展に関するポスターの印刷だった。RGBモードによる広色域の発色は、「自分の作品の色が再現できている」 と個展主催者本人から高い評価を受けた。三上副工場長は、「導入して間もない頃にこの案件を手掛けられたことで、Impremia IS29sの能力の高さを確信できました」 と評価する。
オフセット印刷の再版物をImpremia IS29sで対応する際、当初は営業担当者に不安があった。しかし、「Impremia IS29sは、K-カラーシミュレーター 2を使ってオフセットとのマッチングを行い、色調整したものを1枚からお客様にお見せできるため、置き換え作業が非常にスムーズに進みます。本機本紙校正が可能な利点もあり、お客様からも高い満足度を得られています」 と話す。RGB印刷(左)とCMYK印刷(右)の対比。「インプレミアIS29sの初案件となったポスターは、美術館スタッフから『どこで印刷されたのか』と尋ねられるほど高い評価を受けました」
RGB印刷(左)とCMYK印刷(右)の対比。「インプレミアIS29sの初案件となったポスターは、美術館スタッフから『どこで印刷されたのか』と尋ねられるほど高い評価を受けました」(三上副工場長)
活用に向けた勉強会で理解を促進
導入に際しては、KOMORIによる勉強会が開催された。三上副工場長は、「勉強会では、技術的な説明だけでなく、活用方法を重点的に教えていただきました」。この勉強会には現場担当者だけでなく営業担当者も参加し、Impremia IS29sと従来のオフセット印刷機の違いについて学びを深めた。「そのおかげで、導入に向けてのハードルをクリアできました。特に営業担当者は、広色域でバリアブル印刷が可能という特長を理解でき、営業活動がしやすくなると喜んでいました」。また、「地域では、大型のデジタル印刷機を導入している企業が少なく、その希少性が大きな強みとなります。特に、ポスターをバリアブルで印刷できることは、他社との差別化を図る上で非常に有効です」 と話す。
ポストプレス課印刷係の坂井氏も、「デジタル印刷機の操作が初めてで不安もありましたが、KOMORIから丁寧なレクチャーを受けたおかげで、導入後1週間で操作を習得でき、初めてでも安心して稼働を開始できました」 と操作性に太鼓判を押す。また、特色の再現についても 「Impremia IS29sの導入により、色の再現性も飛躍的に向上しました。ジャパンカラーに基づいたプロファイルを用いており、一度出力するだけで理想的な色が再現されます。そのため、何度も色合わせをやり直す必要がなく、損紙の削減にもつながっています。特色を作るための調色作業や色替え作業がなく、シームレスに次の作業に移れるので、とても楽になりました」 と、Impremia IS29sがもたらす複合的な恩恵を強調した。
「KOMORIのサービスは、メンテナンスの際も非常に丁寧な対応で、疑問点にはいつでも親切に答えていただける点が大変助かっています」(坂井氏)
取り組みを拡大し、さらに多様性のある職場へ
現場では、より柔軟に利益を出せる印刷手法を選択できる体制が整いつつある。三上副工場長は 「現在では、オフセットとデジタル印刷を、状況に応じて使い分ける方向へと徐々にシフトしています。昨今の資材コスト高騰が負担となっている中で、デジタル印刷機の活用が、いかにコスト削減に寄与できるかが重要なテーマです。Impremia IS29sの導入は、こうした課題に対して新たな可能性を示しています」
現在、読み込んだ印刷枚数や絵柄データから概算コストを算出する仕組みの構築も計画中だ。さらにKP-コネクト プロの導入を見据え、コストの見える化も図り、より効率的な運用を目指していくという。今後は、約60%のオフセット印刷機の仕事をデジタル印刷機で代替できると見込んでおり、将来的には80%~90%を賄うことを展望している。
横内名誉会長は、今後の障がい者雇用拡大にも大きな期待を寄せる。「Impremia IS29sの簡便な操作性とメンテナンスの容易さは、印刷部門へ障がいのある方の積極的な配属を後押ししてくれます。デジタル印刷機は、私たちが50年以上にわたって取り組んできた支援の歴史を、さらに進化させる鍵になると確信しています」 と語った。
インプレミアIS29sと青森県コロニー協会の皆さま
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