1920年創立、100年超の歴史を誇る日本紙工株式会社は、東海・関西(本社/京都工場)・九州の3事業部と営業拠点をネットワークでつなぎ、パッケージを主体に企画・設計から印刷・加工までの一貫体制を構築している。近年は機械の長期使用による品質面での課題に直面していた。その解決策として、レトロフィット工事による設備性能向上と印刷コンサルタントによる人材育成を同時に推進。「ハード」と「ソフト」の両面から、印刷品質の安定化と安定供給を図り、生産性も向上させた。この取り組みについて、関口聡子社長、製造第一課課長代理の竹岡悠太氏、係長の飯村拓也氏にお聞きした。
事業部体制を生かす 連携強化への転換
日本紙工㈱の特徴は、九州から東海エリアまでをカバーする3事業部体制にあり、「お客様の製品価値を高めるものづくりが使命」 を標榜している。「地域ごとに異なる商品特性や感覚を共有することで、提案力を高め、デザインから構造設計までを含めて、一丸となってお客様に対応しています」 と関口社長は語る。
一方で、課題もあった。「KOMORI機で統一していても、運用面で共通化が十分でなく、緊急時のBCP(事業継続計画)対応に生かしきれていませんでした。また、従来はトラブルが起きてから原因を探る後手の対応が多く、お客様にご迷惑をおかけすることもありました」 と関口社長。
こうした背景から同社は、2011年より予防保全の仕組み強化と、5Sの徹底に取り組んできた。近年は、全社製造会議や工程別の交流ミーティングを定期的に実施し、部門を横断する情報共有が行われている。また社内では、自主保全士の資格取得に取り組むなど、保全人材の育成も積極的に推進している。
さらに課題を全社で共有し、対応力を高めるため、色管理や設備運用、標準化の進め方を現場で支援する、KOMORIの印刷コンサルタントを活用。現在は、現場の困りごとや工夫を共有しながら改善を進める文化が定着し、拠点を越えた知見共有が進んでいる。
機械性能の向上と運用スキルの体系的強化
近年は印刷機の長期使用に伴い、品質や供給の安定性を維持するうえでの課題が顕在化し、現場からは安定品質を求める声が強まっていた。
竹岡課長代理は 「最も多かったのは色ムラです。特にカラーの掛け合わせでは1色のズレが全体に影響し、品質のブレにつながっていました」 と語る。
こうした課題に対し、関口社長はこれまで感覚に頼りがちだった色や品質の状態を数値で共有できるよう、〝見える化〟することが重要だと判断し、設備面のアップデートを進めた。2022年、京都工場では、印刷機にPDC-SR(分光式色調管理装置)およびPQA-S(インライン品質検査装置)を新規搭載するとともに、フィーダー部のサッカーを最新構成(GL機仕様)にするレトロフィット工事を行った。
一方で、関口社長は 「現場の理解や技術力が伴わないまま設備を整えても、安定品質は実現できない」 と考え、KOMORI
の印刷コンサルタントを併せて活用。色管理・運用スキルの底上げを図った。導入後、関口社長は 「ミスやトラブルの発生件数が50%以上削減され、製造予定が組みやすくなりました」 と語り、飯村係長も 「機械を安定させるため予防保全や管理の標準化が進みました」 と話す。また、他部門と研修内容や活用方法を共有することで、共通言語が生まれ、連携強化につながった。
さらに、関口社長が経営者として大きな変化を感じているのが、オペレーターのモチベーション向上だ。「これまで感覚頼りだった色管理が、数値化と見える化により、自信を持って作業できるようになったと感じます。指導や顧客説明の場面でも、現場が自信を持って伝えられるようになりました」
印刷コンサルタントの様子。
工程別交流ミーティングでは、京都・東海・九州の3事業所が定期的に集まり、まずは現場同士で困りごとや改善事例を共有し、自分たちで課題整理を行っている。そのうえで判断が難しい点や再現性の確保が必要な部分については、印刷コンサルタントを活用し、現場主導での解決につなげている。
通し枚数8%向上 現場改革の成果
「1時間当たりの通し枚数が8%向上(昨年比)」 という、生産性改善が実現した。飯村係長は 「従来は印刷を止めて濃度計で測定していましたが、PDC-SRにより約20秒で管理が可能になり、機械停止時間が大幅に削減されました」。竹岡課長代理も 「従来は色変化をつかみきれず後手対応でしたが、導入後は初期段階で修正でき、品質の安定性が向上しました」 と搭載効果を話す。
PQA-Sは、不適合品の正確な発見に大きく貢献。竹岡課長代理は 「抜き取り検査では、数枚単位の不適合品を見逃すこともありましたが、全品検査が確実に行え、後工程への流出を防げるようになりました」 と話す。飯村係長も 「以前は発見が遅れ、1000枚以上印刷していることもあったが、導入後は200枚以下で検知・停止できるようになりました」 と効果を実感している。フィーダー部のサッカーGL化について飯村係長は 「紙のカールに合わせた細かな調整が可能になったことで、紙詰まりや停止といったトラブルが抑えられるようになり、回転数の向上につながっています」 と話す。
運用面では、印刷コンサルタントによるスキル向上が生産性改善を後押しした。
飯村係長は 「カラー印刷では、刷り出しの色が安定せず、特に新規案件ではツボキー調整も整っていなかったため、手探りで対応していました。しかし、印刷コンサルタントでKHSの活用方法を一から学び、ツボキーの変換カーブを構築したことで、狙い通りの色を1度で出せるようになりました。準備時間も45分以上から約20分へと大幅に短縮しました」 と話す。
こうしたレトロフィット工事と運用改善の取り組みは京都工場にとどまらず、同時期に東海事業部や九州事業部でも進められており、3事業部体制での安定供給力強化につながっている。
左:レトロフィット工事したPDC-SR。
「濃度管理に加えて、ドットゲインカーブやΔE、Lab値を即座に把握できるようになりました。これまで感覚に頼っていた色の判断も、数値で確認できるようになり、目視とΔE3以内に収める運用の目安が非常に分かりやすくなりました」(飯村係長)レトロフィット工事したPDC-SR。「濃度管理に加えて、ドットゲインカーブやΔE、Lab値を即座に把握できるようになりました。これまで感覚に頼っていた色の判断も、数値で確認できるようになり、目視とΔE3以内に収める運用の目安が非常に分かりやすくなりました」(飯村係長)
右:レトロフィット工事したPQA-S。
「不適合品を見逃さないよう、神経を張り詰めて確認する必要がありましたが、人間には限界があります。PQA-Sという"機械の目"が加わることで、見逃しを補完してくれる。現場にとって非常に心強い存在です」(竹岡課長代理)
次の成長戦略「人・データ・環境」
今後について、関口社長は 「全社での改革を推進します。さらに予防保全文化を高度化し、設備面では計画的な修繕、レトロフィット工事を継続。設備の信頼性向上と生産効率の最適化を図ると共に、運用面では標準化とデータ活用を促進することで、再現性の高い生産体制を構築していきます。人材の育成を進め、設備、人材、仕組みの三位一体で、3事業所でBCPや環境対応を推進。さらに信頼される企業づくりを進めます」 と語った。
日本紙工京都工場の皆さま



