顧客第一の技術開発~自動化・省力化・効率化への挑戦~(KOMORI 100年史から見る技術と挑戦シリーズ第二回)
日時:2025年11月04日(火)
・印刷準備時間の短縮や作業の省力化を目的に、当社は1980年代から自動化技術の開発に取り組んできた。
・1990年に発表した完全自動刷版交換装置「APC」は、作業時間を大幅に短縮し、国内外で高い評価を受けた。
・PQCやPDC-S、PQA-Sなどのシステムにより、印刷品質の均一化と遠隔操作による効率化を実現した。
・紙サイズや印圧の自動設定、洗浄工程の自動化などにより、印刷準備時間を劇的に短縮し、作業の標準化を推進した。
・一発見当・色合わせを可能にするKHSと、自己学習機能を備えたKHS-AIにより、損紙削減と生産性向上を実現した。
「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」シリーズ(第二回)
本シリーズ「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」では、当社の100年にわたる歩みの中から、特に印象的な技術革新や事業展開をピックアップしてご紹介する。
第2回は、印刷工程の自動化・省力化・効率化を追求し、世界初の技術を次々に生み出してきた当社の「顧客第一の技術開発」に焦点を当てる。
印刷準備時間の短縮や印刷資材の削減など、作業の効率化をテーマに、当社は1980 年代から自動化・省力化の技術開発に取り組んできた。世界初のAPC(完全自動刷版交換装置)など次々に最新システムを開発し、顧客の期待を上回る印刷品質と生産性の向上を実現した。
印刷性能の向上と生産性の改善を目指し、当社は顧客第一の技術・商品の開発を進めてきた。1980 年代から印刷作業の自動化や省力化などをテーマに、さまざまな印刷システムを完成させた。
1981 年に発表したPQC システム(印刷品質管理装置)は、印刷品質を決めるインキ壺キー、インキ送り、連続給水、版見当などをリモコンで遠隔操作できるハイテクノロジー装置であった。精密なコンピュータ制御により水とインキ調整の難しさを解消し、煩雑な印刷準備から本刷りまでの時間を大幅に短縮することで作業の省力化、印刷品質の均一化を実現した。常に湿し水とインキのバランスを適正に保つ連続給水装置は「コモリマチック」として当社枚葉機の標準装備となった。
その後、PQC システムの一環として、印刷中にインキの濃度と色彩を管理するPDC-S(分光式色調管理装置)、印刷品質を評価するPQA-S(枚葉機用印刷品質管理装置)、印刷機全体の動きをモニタリングするKMS(印刷機械監視装置)などの印刷自動機器システムを開発し、機能の拡張を図った。
世界初の先進技術APC開発
当社の自動化技術で全世界に衝撃を与えたのが、1990 年にDRUPA90 で発表した「APC(完全自動刷版交換装置)」である。熟練オペレーターの経験に頼っていた煩雑な版交換作業を自動化する世界に先駆けて発表された装置で、全自動の「フルAPC」と半自動の「セミAPC」の2 種類の開発を進めた。菊全判マニュアル機の4 色分の版交換に約30 分かかっていたのに対し、フルAPCでは3 分以内で完了し、版の取り付け精度も0.06㎜以内を実現した。
また、当初は菊半裁機用に開発されたセミAPC では、旧版の取り出しと新版のくわえ万力へのセット以外を自動化し、これまで約15 分かかっていた4 色分の版交換を2 分30秒へと劇的に短縮し、取り付け精度も0.06㎜以内であった。
なお、これらAPC の操作は誰でも簡単に行うことができ、版の取り付け精度に伴う見当精度のバラツキも抑えられ、ジョブ切り替えの時間短縮、オペレーターのスキルレス化や作業負担の軽減など、労働環境の改善と印刷品質の向上に著しく貢献した。
世界初の先進技術として国内外で大きな話題となったAPC
こうした先進技術が高評価を受けたAPC は、1991 年に日本印刷学会の技術賞と機械振興協会の協会賞を受賞。さらに1993 年、イギリスのPRINT WEEK 誌より最優秀印刷設備賞、アメリカのGATF よりインターテック技術賞を授与されるなど、海外の印刷業界にも高い評価を得ることができた。
1991年2月に日本印刷学会の技術賞、12月に機械振興協会の協会賞とAPC がダブル受賞。
作業の効率化を図るAMR システム
APC の発表に並行し、印刷作業と生産効率の向上を目的に開発された自動化システムがAMR(自動印刷準備システム)である。フィーダーやデリバリーの紙サイズ設定や紙厚に合わせて印刷ユニットの印圧を数値データにより自動設定するプリセット機能、さらにブランケット胴、圧胴、インキローラーの洗浄を自動化したシステムである。KOMORI機の自動化システムは世界トップレベルとなった。
これらに加え、本機を停止することなくフィーダーの紙積みやデリバリーの山出しなどを可能とした自動ノンストップの機能なども機械仕様に応じて組み込まれた。これらをジョブの条件に合わせてボタン一つで自動制御する技術が盛り込まれたのである。この各種プリセット機能により、菊全判4色機における単純切り替え時間が従来平均17分かかっていたものを、たった3分に短縮することができた。
この結果、本刷り開始までの印刷準備時間で見ても、オペレーター2名で約80分要していたのが、APC 付きAMR システムでは1名操作で約15分に大幅に短縮された。さらにオペレーターの経験や技量に左右されていた各微調整作業もデジタル表示で分かりやすく、かつ精度の高い設定が可能となり、リピートジョブの際も前回の数値でのプリセットが可能なため、印刷作業全体の標準化と印刷品質の安定化にもつながった。
このような自動化機能は、オフセット枚葉機「リスロン」シリーズやオフセット輪転機「システム」シリーズに標準的に搭載されるようになっていった。
左:APC による版交換、右:ブランケット洗浄(上)とインキローラー洗浄(下)

リスロン S40開発時における印刷準備時間の短縮効果
一発見当・一発色合わせのKHSが完成
前述のAPC・AMR 機能により、機械的な切り替えの時間短縮が実現されたが、実際の印刷作業では、次のジョブの本刷りが始まるまでの試刷り時間がダウンタイムとなってしまい、生産性向上のためには、ターゲット濃度と適切な色間見当の合わせ込みが不可欠であった。さらにいうなら、ターゲット濃度を実現するためには、印刷絵柄に応じたインキ膜厚を形成する技術が必要であり、色間見当の合わせ込みには、刷版精度、U カット精度、APC によるレジスターピンへの取り付け精度が重要であった。刷り出し時に特に重要な色間の見当と色合わせのうち、見当についてはAPC をコアとして精度向上が図られたので、次はいよいよ色合わせを迅速化するシステムが求められた。この2 つが揃わないと、最終的には生産性の向上、損紙全体の削減につながらないからである。
こうしたニーズに対応するシステムの研究を重ね、1997 年に日本プリンティングアカデミーと産学共同で印刷準備時の見当合わせと色合わせを一発で完了する世界初の「KHS(コモリハイパーシステム)」を完成させた。KHS は、印刷のデジタル化に対応した生産性向上支援システムとして、CIP3 のPPF データ活用 のキーアイテムとして存在していたPCC(インキプロファイル作成ソフトウエア)による刷版絵柄面積率データに基づいて、刷り出し時の見当・色合わせ作業を革新的に標準化し、刷り出し印刷時の素早い立ち上がりによる印刷準備時間の大幅な短縮と損紙の削減を実現した。これにより、印刷ロットの大小に関係なく、必要な部数を必要な時に供給できるオンデマンド印刷への道が開かれた。

さらにオフセット輪転機用に、一発折合わせ機能を含めたKHS を開発し、2002 年にはこれを進化させたKHS-AI(自己学習機能搭載コモリハイパーシステム)を発表した。従来は、各印刷会社がさまざまな印刷基準に従ってオペレーターによる感覚的な色調整を行っていたが、KHS-AI は、こうした色調の微調整や周囲温度、湿度など、色の変化に関連するデータも記録し、自己学習により最適な補正を自動的に行う画期的なシステムとなり、加えて印刷機の稼働記録や進捗状況をモニタリングする生産管理機能と組み合わせたことで、格段に生産性の向上が図られた。この環境負荷に配慮したKHS-AI の損紙削減技術は高く評価され、2006 年クリーン・ジャパン・センター会長賞と日本印刷学会技術賞を受賞している。

KHS-AI が実現する損紙削減と立ち上げ時間の短縮
印刷のデジタル化に対応した色調管理システム
1990 年代から、印刷業界ではデジタル化が推進されるようになり、それに対応するカラーマネジメントシステム(CMS)の充実が課題とされていた。実機上では、特に前述のKHS-AIで立ち上げた色調が要求された濃度や色彩値になっているか、また左右方向に均一なインキ量が供給できているかを数値管理することが求められ、走査式の分光測色計を用いて、印刷紙の余白に設けたカラーバーを計測する装置が開発された。「PDC-S(分光式色調管理装置)」は、オペレーションコンソール上に一体化した形で装備し、印刷物の濃度や色彩値を高精度で測色するシステムである。このシステムで、従来の濃度計による測定方式から、分光反射率を基本として濃度値のみならずLAB 値なども算出して色差(デルタE)による管理を実現した。もちろん、カラーバーの読み取り値に従い、ツボキー開度に補正をかけるクローズドループフィードバック機能も、多くのフィールド実績により格段に精度を向上させた。このシステムとKHSAIを組み合わせることで、基準値に対する色のマッチング状態の確認と色調の補正を、目視感覚ではなく自動測色で行い、損紙の削減と数値データによるトレーサブルな印刷品質の保証と標準化が実現された。
さらにこのPDC-S の分光測定技術を活用して、プロファイル作成チャートを高速で読み取り、カラーマネジメントの基本要素となるICCプロファイルを生成する「K-ColorProfiler(コモリカラープロファイル生成システム)」を開発した。その特徴は、印刷基準のプロファイルをスピーディーに作成できることである。このために、測定スポットのサイズを極限まで小さくして、できるだけカラーバーやプロファイルチャートが用紙余白内に納まるような改良を続けた( 当時の日本では、用紙余白がほとんど設けられていなかったので、使用頻度を高めるためにこのような改善策をとった)。
なお、K-ColorProfiler によりプロファイルデータが容易に作れるようになったことで、カラーシミュレートの技術が進み、従来のようなハイエンドなDDCP(デジタルカラー校正機)から置き換わり、簡易的なインクジェットプリンターが色校正用に使えるという効果も生んだ。PDC-S は、カラーバー位置の自動検知と高速測定に対応するPDC-SII や、廉価版モデルのPDC-LITEII へと機構改良され、さらに次世代型のPDC-SX では、天地左右の2 軸で動作するシステムへと機能を拡張した。その後、PDCSXには印刷物の全面を読み取るスキャナーが搭載され、製版用画像データ(PDF)と実際の印刷物を比較検証するPDF 認証型のオプション機能も開発された。
こうして当社は他メーカーに先駆けて、常にお客様目線で印刷機周辺の自動化・省力化装置の開発に取り組んできたのである。

2018 年時点におけるKOMORI CMS ソリューションズ システム関連図




