「リスロン」の確かな技術 世界を席巻するベストセラー枚葉機(KOMORI 100年史から見る技術と挑戦シリーズ第一回)
日時:2025年09月05日(金)
●1981年にKOMORI初のオリジナル枚葉機「リスロン40」が誕生。世界市場進出を見据えた戦略機として注目を集める。
●PQCやAPCなどの革新的機能を搭載し、生産性向上とコスト削減に貢献。印刷現場の効率化を支える技術力を確立。
●多彩な機種展開と短期間でのモデルチェンジによって市場を拡大し、1999年には累計販売台数1万台を突破。
●毎時1万8,000回転の高速印刷を目指した構造改良と部品開発により、世界最高水準の性能を達成。
●省エネ・高品質・短納期を兼ね備えた環境対応型「リスロンGX/G アドバンス」シリーズによる持続可能な印刷技術の牽引。
「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」シリーズ(第一回)
本シリーズ「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」では、当社の100年にわたる歩みの中から、特に印象的な技術革新や事業展開をピックアップしてご紹介する。
第1回は、世界市場で1万台以上を販売したベストセラー枚葉機「リスロン」シリーズの誕生と進化の歴史を振り返っていく。
株式会社小森コーポレーションの「リスロン」シリーズは、1981年にオフセット枚葉印刷機「リスロン40」から始まった。幾多のアップデートを経て、世界市場で1万台以上を販売するベストセラーシリーズへと成長し、独自技術で高速・高品質・環境対応を実現。PQCやAPCなどの 先進機能を搭載した印刷機は、印刷業界の生産性向上とコスト削減に貢献してきた。現在では、世界最高クラスのROI(投資収益率)を提供する「リスロンGX/G アドバンス」シリーズなど多彩なラインアップを展開し、世界中の印刷会社から高い評価を得ている。

1981 年のデビュー以来、ロングセラーを続ける「リスロン」シリーズ。
小型機から大型機まで幅広いラインアップを誇る当社の主力製品である。
今も先進システムとハイテク機器を搭載した次世代枚葉機として、当社の技術力とブランド力を世界へ発信する原動力となっている。
「リスロン(LITHRONE)」の商品名は、Lithograph(印刷)とThrone(王位の座)の合成語
印刷機の歴史を変えた「リスロン」
オフセット枚葉機「リスロン」の開発は、「コニースーパー9」「コニースーパー10」の後継機として1979 年から始まった。開発コンセプトは「KOMORIオリジナル枚葉機を開発する」。従来機は主にドイツ製の機械を参考にしていたが、それだけではなく当社独自の開発内容を盛り込み、KOMORIの技術に特化した枚葉機を目指したのである。その背景には、当社の設計技術力を世界に示し、欧米市場へ進出する際の戦略機とする狙いもあった。
最初の機種は1981 年に発表した菊全判4 色機「リスロン40」。最高印刷速度毎時1 万3,000 回転の高速枚葉機で、世界市場でニーズの高い40インチ(国内では菊全寸延サイズ)に対応する機種として注目された。オペレーションスタンドからの遠隔操作を実現したPQC(印刷品質管理システム)と連続給水装置「コモリマチック」を標準装備したリスロン40 を同年9 月のIGAS'81 に出展すると、大きな反響を呼んだ。この年の当社の売上高は前年比で国内15% 増、海外においては61% 増を記録したが、その原動力となったのがこの「リスロン」であった。
これを転機に「リスロン」のシリーズ化に取り組み、翌年には単色と2 色刷りに特化した「リスロン40E」を開発。続いて四六全判「リスロン44」、A 倍判「リスロン50」、片面・両面兼用「リスロン40P」を発表し、中型から大型機のラインアップを完成させた。1983 年には菊半裁「リスロン26」、1989 年、前準備時間を大幅に短縮した四六半裁「リスロン32」を開発した。
こうしてシリーズ5 機種が出揃い、翌年にはリスロン誕生以来シリーズ合計で3,000 台の売り上げを達成した。
販売台数1万台を突破
1988 年からは「リスロン」シリーズのアップグレードを図り、「ニューリスロン」として、菊半裁・菊半裁寸延「ニューリスロン26/28」、菊全判「ニューリスロン40」、1989 年に四六半裁「ニューリスロン32」、四六全判「ニューリスロン44」、1990 年にA 倍判「ニューリスロン50」を発表し、それぞれ2 色機から6 色機までを標準生産に組み入れた。ニューリスロンは、短期間に主力機種を一気にモデルチェンジしたケースとして、国内のオフセット印刷機業界では初めての試みでもあった。これは顧客ニーズを第一に考える開発コンセプトと高度な技術力から生まれたもので、「ニューリスロン」は国内外から圧倒的な支持を得た。
DRUPA90 では、APC( 完全自動刷版交換装置)とAMR(自動印刷準備システム)を装備し、「ニューリスロン40」、表面多色・裏面単色刷りの菊全判「ニューリスロン40RP」、菊四裁高級カラー印刷機「リスロン20」、菊全判反転機構付2 色機「リスロンⅡ 40」などを公開し、世界の印刷人の注目を集めた。この後も反転多色機の開発では試行錯誤を繰り返したが、1993 年に反転機構付4色機「ニューリスロン40P」を完成させ、さらに6色機へと展開し、1996 年には8 色機を発表。
ワンパスで両面フルカラー印刷を実現することで、生産効率の向上に大きく貢献した。これらリスロンシリーズのラインアップは世界市場でのシェア拡大につながり、1999 年には累計販売台数1 万台を突破し、名実ともに世界のベストセラーシリーズの一員となったのである。
毎時1万8,000回転への挑戦
DRUPA90 でニューリスロン40 が、ドイツ勢においてはさらなる高速化が図られ、1 万5,000 回転の枚葉機も出展されていた。当時はF1 レース同様、マシンのスピードが技術力をアピールする指標として競われていた時代でもあり、段取り替えと高速生産の両面からの技術革新が求められ、年々そのニーズが高まっていた。世界の大手印刷機企業との競合を勝ち抜くには、印刷速度の高速化は避けて通れない課題であった。ニューリスロン40の1 万4,300 回転からの向上は、ベースマシンの耐久性などにまだ課題があると考えられた。そこで創業70 周年を迎える1993 年までに、本格的に市場に出せるレベルの1 万5,000 回転のマシンを開発する、という目標を立て、それに向けて技術改良を進めた。試験的に印刷機の回転数を上げると、機械のさまざまな部位で部品の摩耗や損傷、変形、印刷エラーが出るケースが認められ、予想以上に苦戦を強いられた。それでも当社が誇る開発と製造の力を結集して、粘り強く部品の試作、テスト印刷を繰り返し、1993 年1 万5,000回転仕様の70 周年モデル「ニューリスロン40」の開発に成功し、IGAS'93 などで披露した。
その後、その構造でのパフォーマンスに限界を感じ、リスロン40 を超える最先端の枚葉機「スーパーリスロン」を開発するためのプロジェクトを立ち上げ、各部署から選抜された先鋭メンバーがその任に当たった。2000 年に完成した試作モデルを約1 年半かけて検証し、2002 年にフルモデルチェンジした「リスロンS40」を発表。同機種では、使用部品の7 割以上が新規の設計を採用し、IT・デジタル化への対応、高印刷品質の実現、操作性・安全性・耐久性の向上、環境負荷の軽減などを実現した。最高印刷速度は毎時1 万6,000 回転となり、これまでのリスロン機で開発してきた自動化システムを組み込み、印刷会社の収益確保とコスト削減に貢献した。

このリスロンS40 のさらに上位機種として2008年に開発したのが、「リスロンSX40」であった。リスロンS40 の機能を継承し、KHS-AI(自己学習機能搭載コモリハイパーシステム)、新開発のフルAPC(全自動刷版交換装置)などを装備した高生産機であり、最大紙も紙幅1,050mm に対応した当社のフラッグシップマシンとして位置付けられた。最高印刷速度毎時1 万8,000 回転を初めて実現した機種であったが、この速度の達成にも、またもや多くの困難に直面した。フィーダーやデリバリーの構造、インキローラーの配列などの特性を徹底的に研究し、何度もテストを繰り返して当時の枚葉機の世界最高回転に肩を並べたのである。

環境配慮型リスロンの開発
2011 年から販売を開始した菊全判機「リスロンG40」は、環境負荷低減に対応したハイグレードマシンとして登場した。商品名のG には、環境に配慮した「GREEN」、高性能を追求し「GREAT」の意味が込められている。最高印刷速度を1 万6,500 回転に設定。環境負荷に関しては、従来機と比較して消費電力を6%、損紙を55%、二酸化炭素排出量を約20% 削減し、印刷準備時間も約40% 短縮することに成功した。また、KHS-AI、新乾燥システムH-UV(高感度紫外線乾燥システム)、自動化制御システムなどを搭載し、高品質・低コスト、小ロットに対応、短納期を実現するなど、エコロジーとエコノミーを兼ね備えた機種である。以降、反転機構付き「リスロンG40P」、厚紙専用仕様機「リスロンGX40 Carton」、菊全判両面専用多色機「リスロンGX40RP」、さらに最高印刷速度毎時1 万8,000 回転の菊全判機「リスロンGX40」をラインアップした。また、当社の得意としてきた段取り替え時間のさらなる短縮を目指して開発されたA-APC(全色同時刷版交換装置)と、各自動洗浄中に切り替え操作を行うパラレル制御機能を搭載することで、段取り替え時間は劇的に短縮された。
2020 年に入り、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより社会や経済情勢が大きく変化するなか、drupa2020 の開催も延期となった。この年、当社は「リスロンGX/G」シリーズを進化させた「リスロンGX/G アドバンス」シリーズ(全8機種)を発表した。同シリーズは世界最高クラスのROI(投資収益率)を提供する機種として、印刷会社の経営課題である生産性の向上を図ることを目指したのである。従来機の基本性能を見直し、薄紙から厚紙まで安定した給排紙を実現した「フィーダー・デリバリー」、高速印刷中も印刷品質の安定性を保つために改良した「コモリマチック給水装置」、KP- コネクトとの連携により、操作性を各段に改善したオペレーティングシステム「PQC」を3 つの柱としてアップグレードした。
さらに、PQA-S(枚葉機用印刷品質管理装置)による印刷中の色・見当の自動制御機能との組み合わせにより、これまでの「リスロン」シリーズの中でも最高レベルの生産性を実現するモデルとなった。一方で、今後も伸展が期待されるパッケージ印刷に向けての取り組みとして、リスロンGX を基軸に開発したローラー単独駆動やコーター用のAPC、マルチコーターユニットを含めた超多色機、さらには特色の色替え作業を短縮するためのさまざまな機械構成のラインアップを行った。また、色替え自体をなくして特色領域の色を再現するスマートカラーの開発にも取り組んでいる。
今後も、2030 年に向けて特に世の中が注目している環境負荷低減に貢献するシステムの構築を行い、印刷作業時の消費電力量を削減する次世代装置など、省エネルギーにも特化した機械へと進化させていく。(drupa2024 にて発表)

リスロンGX40RPアドバンス EX Edition




