デジタル印刷の進化と市場拡大 J-throne 29が実現する生産性と柔軟性
日時:2025年12月10日(水)
目まぐるしく変化する社会の中で、印刷業界も大きな転換期を迎えています。2024年に開催されたdrupaでは、デジタル印刷機の出展台数がオフセット印刷機を上回るなど、業界の変化が顕著に表れました。
KOMORIが同展で発表したB2デジタル印刷機 J-throne 29は、2025年6月より北米を皮切りにグローバルに販売を開始しています。
本特集では、デジタル印刷市場の全体像と成長要因、そして最新デジタル印刷機 J-throne 29がもたらす価値を通して、印刷業界の未来を展望します。

世界的に拡大するデジタル印刷市場
今日の印刷業界は、かつてないほどの変化の渦中にあります。原材料やエネルギーコストをはじめとする資材高騰は利益を圧迫し、熟練オペレーターの高齢化と若手人材の不足は、生産体制の維持を困難にしています。さらに、クライアントのニーズが多様化し、小ロット・多品種化、パーソナライゼーションなどへの対応が求められています。
これらの課題を乗り越え、企業が持続的に成長するためのソリューションの一つとして、デジタル印刷への注目が年々高まっています。
この傾向は市場データにも明確に表れています。世界の印刷市場では、デジタル印刷の出力枚数が増加しており、市場調査などを行うSmithers社によると、2024年時点で世界のデジタル印刷出力枚数は約1兆8460億枚(A4判換算)に達しました。この成長は今後も継続し、2029年には約2兆4140億枚に達すると予測されています。 《図1》

商業印刷、出版印刷、パッケージ印刷など、複数の分野においてこの傾向は見られ、Smithers社は、「印刷市場のデジタルシフトは今後も不可逆的に進み、2029年には世界の印刷物は金額ベースで約21%がデジタル印刷機で生産される」と予測しています。
デジタル印刷機の導入台数も増加を続け、2024年時点で世界のB2枚葉デジタル印刷機は、インクジェット機とトナー機合わせて約1800台が稼働しています。中でも、B2枚葉インクジェット印刷機の2029年までのCAGR(年平均成長率)は、約16%に達すると見込まれており、本格的な普及期に突入しています。 《図2》

また、デジタル印刷全体の出力枚数におけるインクジェット印刷機とトナー機の割合は、2024年にはインクジェット印刷機が全体の約65%を占め、2029年には約75%まで拡大すると見込まれています。これは、インクジェット印刷機の技術向上による生産性とコスト面での優位性が認知されることを示しています。
デジタル印刷市場拡大の要因
デジタル印刷機の普及が加速している要因は多岐にわたります。
第一に、パーソナライゼーション需要の高まりが挙げられます。デジタルマーケティングの進化に伴い、個々の消費者に対して最適化された情報を届けることが可能となり、印刷物にも高度なパーソナライズが求められるようになりました。
特に北米ではダイレクトメール(DM)のニーズが回帰し、市場が大きく成長しています。4000~5000枚のジョブをフルバリアブルで印刷するケースも増加しており、デジタル印刷機のさらなる高速化が求められています。
第二に、資材高騰が市場の変化を加速させています。印刷用紙をはじめとした資材価格は、米国ではコロナ禍前と比較して1.5倍に上昇し、印刷料金も高騰しています。これにより、クライアントは、バージョン管理や小ロット対応、タイムリーな生産対応など、印刷物により高い付加価値を求めるようになっています。
第三に、労働者不足への対応も大きな要因の一つです。若手オペレーターや熟練技術者の確保が困難となる中、未経験者でも短期間のトレーニングで操作可能なデジタル印刷機は、人材確保の面でも有効な選択肢となります。
第四に、デジタル印刷品質の進化が挙げられます。かつてはオフセット印刷に品質で劣るとされていたデジタル印刷ですが、最新のインクジェット機は1200dpiの高精細出力が可能で、オフセット印刷と遜色ない画質を提供できるようになりました。
さらに、環境対応への要求も普及を後押ししています。特に、環境規制が厳しい欧州では、刷版やインク、紙のロスが少ないデジタル印刷機は、持続可能な生産方式としてブランド企業の調達基準にも合致する選択肢となっています。
次世代デジタル印刷機J-throne 29がもたらす価値
これらの市場課題に対するKOMORIのソリューションが、UVインクジェット印刷機J-throne 29です。本機は、長年にわたり培ってきたオフセットの信頼性と、最先端のUVインクジェットが持つ柔軟性を融合させた次世代デジタル印刷機です。
ここからは、J-throne 29が、印刷ビジネスにどのような価値をもたらすかを深掘りします。


①圧倒的な生産性とROIを実現
生産性の向上は利益率改善に直結する最重要課題です。J-throne 29は、生産能力の最大化と運用の効率化を実現し、持続的な収益をもたらします。
J-throne 29の最大の特長は、片面印刷で6000sph、両面印刷で3000sphというクラス最速の印刷スピードです。オフセット印刷機で培った高精度な用紙搬送技術を搭載することで、B2+サイズの大判用紙でも安定した生産を可能にしました。特に反転機構は、極めて高い表裏見当精度を誇り、高速でのワンパス両面印刷を可能にします。
さらに、DFE(デジタルフロントエンド)をはじめとする新開発の画像形成技術により、1枚目から安定した高品質印刷が可能です。
従来は小ロット向けとされていたデジタル印刷機ですが、J-throne 29は印刷スピードの大幅な向上により、数千ページ規模のフルバリアブル印刷など、中〜大ロットの仕事においても高い生産性を発揮し、稼働率を最大化します。
②操作もメンテナンスも、 驚くほどシンプルに 人材確保にも寄与
J-throne 29の魅力は、印刷性能だけではありません。操作性とメンテナンス性も追求しており、現場の負担を大幅に軽減します。
印刷の進行は紙のハンドリングを除き、全てタッチパネルで完結します。複雑な操作を排除した誰でも直感的に扱える設計により、未経験者でも短期間でオペレーション・メンテナンススキルの習得が可能です。これにより、オペレーター採用のハードルを下げ、現場の人材確保を支えます。
また、シンプルな機械構成により、メンテナンスポイントを最小限に抑えた設計となっています。UVインクの特性から、インクジェットヘッドのノズル詰まりが発生しにくく、特別な保全作業が不要です。印刷現場の負担を軽減するとともに、インクジェットヘッドのライフサイクル延長にも貢献します。
③環境にも優しい設計
J-throne 29は環境負荷の低減にも大きく寄与します。
乾燥方式にLED UVを採用することで、1枚当たりの生産にかかる電力消費や排気熱、廃棄物の発生を最小限に抑えました。
また、水性インクジェット機で必要とされる熱風ドライヤーや排気ダクトが不要なため、設置面積がコンパクトで限られた工場スペースを有効活用でき、スマートな印刷を実現します。
消耗材はインクとヘッド洗浄布のみで、プリコート液や保存液は不要なことから、廃棄物の削減にも貢献します。特に強酸性のプリコート剤のような特別管理産業廃棄物が発生しない点は、環境配慮とコストの面でも大きなメリットです。
さらに、1枚目から安定して生産できることから、試刷りや調整による損紙もゼロに抑えられ、無駄のない持続可能な生産体制を構築します。
④多様なアプリケーションへの対応力と柔軟性
J-throne 29は幅広い原反への対応力を持ち合わせており、さまざまなアプリケーションの安定生産が可能で、ビジネスの可能性を大きく広げます。 《図3》
《図3》J-throne 29のアプリケーション例

独自のLED UVインクを採用することで、用紙への下処理やコーティングを必要とせず、薄紙から厚紙、さらにはフィルムや合成紙といった特殊素材にも直接印刷が可能です。(原反により、事前に評価テストが必要な場合があります。)
最大紙寸法は585×750ミリのB2+サイズ、紙厚は最小0.06ミリ、最大0.6ミリ(片面印刷の場合)まで対応可能で、商業印刷からパッケージ印刷まで幅広い仕事をこなします。
また、デジタル印刷機ならではのバリアブル、パーソナライズやバージョニング印刷にも対応し、印刷物により高い価値を付与します。例えば、フルバリアブルのDMを大ロットで高速生産したり、W2P(Web to Print)において大量の極小ロットを生産するケースで高い生産効率と付加価値をもたらします。出版印刷では、丁合が不要となるブックブロック出力による納期短縮や、最小限の在庫のみを生産し、状況に応じてタイムリーな変更に対応できるオンデマンド印刷のニーズにも応えます。
今日の印刷業界において持続的に成長するためには、価格競争から一歩抜け出し、独自の価値を確立することが不可欠です。
J-throne 29は、単なる生産設備ではなく、印刷ビジネスの付加価値向上と業務領域の拡大を実現し、印刷会社が従来の枠を超えてクライアントの課題解決に貢献できる体制づくりを後押しします。


左:高速稼働を支える用紙搬送システム
オフセット印刷機と同じフィーダー、反転機構を採用することで、インクジェット印刷機での高速稼働と高い表裏見当精度を実現。
右:イージーオペレーション
直感的なインターフェースで誰もが扱いやすいシンプルな操作性。
未来を切り開く戦略的パートナーとなるJ-throne 29
J-throne 29は、現代の印刷業界が直面する「生産性の向上」「人材確保」「高付加価値印刷」「環境対応」といった課題を同時に解決することで、印刷会社の新たな成長と変革を支えます。
サポートは、KOMORIがオフセット印刷の分野で築いてきた信頼と実績に基づいた体制を整えています。稼働状況をリアルタイムで共有するKP-コネクトによるリモートサポートをはじめ、導入後の安定稼働を支える充実したサービス体制により、お客様の挑戦と成長を継続的に支援します。
デジタル印刷におけるプリントテクノロジーは日々進化しています。J-throne 29も、印刷品質や操作性の向上はもちろん、さらなる高速化・サイズアップ・自動化など開発の可能性は多岐にわたります。今後も市場動向やお客様の要望に耳を傾け、技術革新を続けることで、お客様に価値をもたらす機械として進化させていきます。
さらに、KOMORIはスマートファクトリー構想のもと、機械単体の性能だけでなく、工場全体の生産性向上を目指し、最新テクノロジーを活用した次世代の印刷工場や生産設備を提案してまいります。
お客様のビジネスを次のステージへと飛躍させ、感動をもたらすKOMORIのデジタル印刷機 J-throne 29にぜひご期待ください。
J-throne 29 導入事例
米国・1Vision社 J-throne 29で生産性と柔軟性の両立を実現
北米初となるJ-throne 29が、2025年6月に米国の1Vision社に導入されました。
1Vision社は、全米に拠点を持つ商業印刷およびDM分野のリーディングカンパニーです。同社は迅速な対応と卓越した品質を強みとし、幅広いサービスを展開することで、全米で高い評価を得ています。
J-throne 29の導入は、顧客第一を掲げる同社にとって、納期の短縮、柔軟性の向上、運用効率の強化を実現するための戦略的な一手です。次世代デジタル印刷機への投資を通じて、技術面での優位性をさらに高めることを目的としています。
導入に際して、同社のCEO兼オーナーであるAllen Taheri氏は、日本での実機テストに参加し、J-throne 29の品質と安定性を高く評価しました。「当社にとってKOMORIは7年間にわたり素晴らしいパートナーであり続けています。日本の工場で行われた実機テストを通じて、J-throne 29を当社のビジネスモデルに取り入れる価値を感じました。この印刷機は、当社のデジタル印刷分野での成長ビジョンと完全に一致しており、B2+サイズの印刷において、生産性と柔軟性の両面を大きく向上させることを確信しています」
Komori Americaの執行副社長Mark Milbournも、「1Vision社のJ-throne 29への投資は、スピードと品質を両立するデジタル印刷機のニーズが高まっていることを示しています。同社との関係をさらに深め、この新たなチャレンジに取り組めることを誇りに思います」と、コメントしています。今回の1Vision社のJ-throne 29導入は、北米におけるKOMORIのデジタル印刷技術の確立と拡大に向けた重要な一歩であり、今後の市場展開においても大きな意味を持つ事例となりました。
1Vision社に導入されたJ-throne 29
[関連情報]
■製品情報:J-throne 29




