2020.10

大黒印刷株式会社 様

高速紙折り機 MBO K80 と MBO T800・1 導入で
〝加工ありき〞の受注拡大を推進。

  • 横田 充男
    代表取締役社長
    横田 充男 氏
  • 北川 雄樹
    執行役員工場長兼生産本部長
    北川 雄樹 氏
  • 清原 勝
    製造部部長
    清原 勝 氏

折り工程を内製化すると印刷工程に余裕が生まれる

両面8色刷オフセット輪転機2台で、大ロットの折り込み広告やカタログ冊子をメインとする大黒印刷㈱。生産量は、月に平均3千万通し強、最大で4千万通しにも上る。そのうちの1割程度がシート出しで、断裁作業の省力化と全体の効率化を図るため、2018年にアプリシアCTX115(プログラム油圧クランプ大型断裁システム)を導入した。
(アプリシアCTX115導入についてはON PRESS 206号に掲載。→アプリシアCTX115導入を見る
「アプリシアC T X 1 1 5は、その後、もう1台増設し、現在は2台が稼働しており、かなりの効果を実感しています」と語る横田社長は、今回のMBOK80(高速コンビネーション紙折機)とT800・1(高速バックル専用紙折機)の導入について、「輪転機の稼働率をさらに高めるための戦略」 と説明する。
「折り工程を内製化することで、利益を上げようという狙いはありません。折り機を保有することで、印刷後に折り工程がある印刷物の受注を伸ばして、輪転機の稼働率をさらに高めることを考えています。印刷後に横持ちなしで断裁、折りなどの加工に移れるということは、発注側にとって、費用削減と納期の短縮というメリットがあります。当社にとっては、印刷のみを請け負うよりも、折りの工程まで含めて請け負う方が、納期までの期間を長く確保でき、印刷工程にも時間的な(スケジュールの)余裕が生まれます。実際に、その分、多くの仕事を受注する可能性が高くなりました」

アプリシアCTX115からMBOの流れを省力化・省人化

折り機の導入は、スマートファクトリー化を進める、中長期的な計画の一環で、大ロットに対応できる折り機を選択することで、現場に省力化をもたらす戦略に基づいている。横田社長は 「当初より、大ロットでスピードのある機種を考えており、MBO決定にはドイツ本国の現場を見学するなどの経緯があり、大ロットだけでなく小ロットも可能なMBOの導入を決めました」 と話す。
MBOの導入から約1年にわたって稼働させてきた印象について、北川工場長は、「当社の印刷機は輪転で、大ロットの案件がほとんど。量産することをベースに考えると、折り機のサイズも大きくないとなりません。1丁で折るのと2丁で折るのでは、単純に生産量が2倍違う。実際にMBOは、B1サイズに対応しており、しかも高速域での安定性が他機種に比べて圧倒的に優れていると感じています。一般的に折り加工の種類は数え切れないほどあり、当社では大多数をこなせるように2台で構成しています。また、当社はページ折りをするよりも、2回、3回、4回などのパラレル折りが多いため、カタログ値ではなく、特に実質の回転数がものをいいます。折りの工程は、速度を上げるほど紙が左右に振られる現象が起こりやすいものですが、MBOはその現象を抑制できており、毎分230メートルの最高速度で回すことができています」 と、精度を伴う回転数の高さを評価する。さらに、キズ・コスレが発生することもなく、バキュームで紙を吸い付けて搬送する構造によって、紙を選ばず、安定性が高い。また、クレームは今まで"ゼロ"という。
では、「現場に省力化をもたらす戦略」という点においては、どうだろうか。
「MBO導入後、アプリシアCTX115にアンローダーを追加し、断裁〜折り工程のワークフローの省力化を実現しています。アプリシアCTX115で断裁したものがアンローダーによってパレットに積まれ、そのままMBO K80のパレットフィーダーにスライド、折りの工程に入れます」 と北川工場長。パレットフィーダーに刷本を載せる際や断裁でも、加工部門はどうしても人手がかかり、担当者の大きな負担になっている現場は多いが、大黒印刷ではアンローダーを導入することで、負担軽減と時間短縮を同時に実現した。さらに、人員補強をせずに生産性を高める方策として、オフセット印刷のオペレーターやプリプレス(刷版)の担当者が、持ち回りでポストプレスを担当できるよう、高性能な機械で技術面をカバーすることで、現場の改善を図っているのだ。

印刷から製本までを一つの敷地内かつワンストップで

2台のMBOの導入により、輪転機の稼働率を高めることを念頭においたスマートファクトリー化を、さらに一歩進めた大黒印刷。今回の投資について、北川工場長は 「思い切った初期投資も、量産力と耐久力、安定性の観点から見て、導入効果は十分にあったと感じています」 と語る。
また、MBOを実際に操作する清原部長は 「折りの工程も奥深く、さまざまな可能性があり、楽しいです。後加工のことを学ぶことで、それを印刷にも役立てることができます」 と、モチベーション高く働けているという。
横田社長は 「印刷から製本までを一つの敷地内、かつワンストップで行えるようにしたい」 という展望を持っている。
「折りは初めてだったので、最初は練習機として安価な機械を入れるという選択もあった。しかし、私も工場長も、それではその機械が無駄になるし、最初から性能の高い機械を入れて、自社の工程に(ビジネスに)バシッと組み込みながら、技術を習得する選択を取りました。それが成功しました。ヨーロッパでは、印刷から製本まで一貫生産が当たり前。当社も、性能の高い後加工機の導入を検討し続けて、いずれは製本まで一貫生産できる体制を整える計画です」


MBO K80(左)、MBO T800.1(中央)、アプリシアCTX115 2台とアンローダー(右)。
「輪転からのシート出しをして、アプリシアCTX115に運び、断裁。そのままアンローダーでパレットに積み、パレットごとMBO K80に挿入。ラウンドフィーダー搭載のMBO T800.1は、枚葉の製品が厚い紙の場合や、輪転機で折り出したものを再加工する場合などに使用。この2台構成で、95%の折り作業を処理できています」(北川工場長)

大黒印刷株式会社

本社:京都府綴喜郡宇治田原町緑苑坂52-5
TEL: 0774-88-6655

トップへ戻る