飛躍するPE 事業(KOMORI 100年史から見る技術と挑戦シリーズ第四回)

日時:2026年01月20日(火)

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・KOMORIは印刷技術を電子回路形成に応用し、環境負荷とコストを低減するPE事業に挑戦。
・グラビアオフセット印刷を採用し、微細線印刷技術で高細線化と高生産性を実現。
・台湾ITRIとの共同開発や展示会でL/S=9/9μmの極細線印刷を達成し、国際的評価を獲得。
・旧東海グループを買収し、スクリーン印刷とグラビアオフセット技術を融合、事業基盤を強化。
・半導体分野でチップレット対応のはんだボール搭載技術やVia穴埋め技術を開発し、成長市場に貢献。

「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」シリーズ(第四回)

本シリーズ「KOMORI 100年史から見る技術と挑戦」では、当社の100年にわたる歩みの中から、特に印象的な技術革新や事業展開をピックアップしてご紹介する。
第4回は印刷技術の可能性を電子回路形成へと広げた新事業、PE(プリンテッド・エレクトロニクス)に迫る。

当社が有する印刷技術は業界屈指のものである。印刷は紙、インキ、水、空気などの柔軟体制御技術と高精度駆動伝達、精密加工、振動抑制などの剛体制御技術の両方が高度に連携することで成り立っている。これを他分野に活用できないか。そこから当社の挑戦が始まった。

高精度印刷技術を活用した新事業

当社が着目したのは、印刷技術の電子回路形成プロセスへの適用であった。電子回路はガラス、セラミック、PCB 基板等へのスパッタリング、CVD などによる「製膜」、「露光」、「現像」、「洗浄」などの手法を組み合わせた「リソグラフィー」技術により製造されており、工程が複雑な上に環境への影響が大きい。そこで、必要な材料を「必要なだけつける印刷技術」を適用することで、必要な部分を残し「大部分を削って捨てる」技術に比べて製造プロセスにおける環境負荷や製造コストが格段に低くなると考えた。多種の印刷法の中から電子回路での細線印刷に最適な印刷法として選択したのがグラビアオフセット印刷であった。2011年、当社はRtoR(ロールto ロール)タイプのグラビアオフセット印刷機PEPIO R20 を、2012年には枚葉タイプのPEPIO F20 を開発。電子回路を形成するPE(プリンテッド・エレクトロニクス)事業において高細線化と高生産性を可能にした。

2012 年、Touch Taiwan 展にてグラビアオフセット印刷による微細線印刷技術の取り組みを発表した。この展示会ではAg(導電性の銀ペースト)による線幅7μm の透明電極がタッチパネルで使用されることを想定したメタルメッシュ印刷サンプルを出品し、注目を集めた。2013 年1 月、台湾工業技術研究院(ITRI)と共同開発契約を締結。8 月に台湾で開催されたTouch Taiwan 2013 では、グラビアオフセット印刷によって作成された実際に機能するタッチパネルをL/S=20/20μm の設計ルールにて実現。同年10 月には横浜で開催されたFPD international 2013 において、さらに極限まで狭額縁化を推し進め、L/S=9/9μm を達成した「ウルトラスリムベゼル」をRtoRグラビアオフセット技術によって実現。これによりFPD International アワード優秀賞を受賞し、日本、台湾の各メディアで取り上げられ大きな反響を呼んだ。

この技術を事業化へと進めるために当社が行ったのは、旧東海グループの買収だった。同社はスクリーン印刷によるPCB 基板へのソルダーレジスト用印刷機などを扱っており、エレクトロニクス業界との太いパイプを有していた。印刷機の製造・販売だけではなく製版事業も持っており、また商社機能としてインキや洗浄液などの資材販売も行うなど、お客様へのトータルソリューション提案ができる環境が整っていた。そこへ当社のグラビアオフセット印刷技術を融合させることにより、相乗効果で電子回路や電子部品の製造において有利なポジションを築くことが可能だと考えたのである。

旧東海商事、東海精機との経営統合が2014年。翌年にはそれぞれ社名をセリアコーポレーション、セリアエンジニアリングと改め、PE の事業主体はセリアコーポレーション、印刷機の設計・製造はセリアエンジニアリング、要素技術開発は当社が担う体制を整えた。

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左:ファイン配線用フラットベッドタイプ グラビアオフセット印刷機PEPIO F20
右:ファイン配線用 R2R グラビアオフセット印刷機 PEPIO R20

セリアグループの半導体分野への進出

セリアグループはスクリーン印刷とグラビアオフセット印刷技術を提案できることが強みである。近年、自動車のEV 化・自動運転、企業のDX 化、5G など通信インフラ、AI 普及によるデータセンターの巨大化など半導体業界の重要性は増大するばかりだ。これまで半導体パッケージは一つのパッケージ内に1 枚のチップを搭載していたが、それではチップ設計と製造歩留まりに不利ということで、近年では一つのパッケージ内に複数のチップを搭載するチップレット化が進行している。

チップレットにおいてセリアが貢献できる技術として提案しているのが、はんだボール搭載技術と多層基板の層間導通を取るための貫通Via 穴埋め技術である。

はんだボール搭載技術はボール搭載機で世界トップシェアを占めるアスリートFA 社と共同開発した。必要とされるフラックス印刷の径とピッチは、スクリーン印刷で可能な微細化と印刷座標精度の限界をすでに超えている。グラビアオフセット印刷を用いることでスクリーン印刷の限界を超えるΦ30μm ピッチ60μm のボール搭載を印刷座標精度±5μm 以下の精度で実現する世界初の技術を完成させた。

一方の貫通Via 穴埋め技術であるが、これには真空スクリーン印刷機を用いる。真空中で印刷を行うことでボイド(気泡)の混入を防ぐ効果がある。ボイドは熱処理の過程で膨張して破裂することがあり、信頼性、製品歩留まりの観点から絶対に混入を許してはならない。CCD カメラ付き半自動真空穴埋め印刷機「SVM-6151IP」は発売以来、高い評価を得ており、すでに国内外多数の半導体関連企業に導入実績がある。チップレット化においては基板やインターポーザーをガラス化するなどの技術革新も行われつつある。今後も当社は成長分野の事業を見極め、時代の要求に合った生産設備の増強、技術開発に努め、半導体関連業界の発展に寄与していく。

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真空印刷機「SVM-6151IP」の自動化提案例